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本ブログに記載されている内容は個人的見解です。

20180831

子どもの変数を定義する幾つかの方法の下で、この論文では財に対する需要を

q_i(p,x,z)

のように定義する。pは価格ベクトル、xは総支出のベクトル、zは子ども変数のベクトルである。計量の効率性に関する議論で類似するものがある。子どもの効果を適切にモデル化するためには、過剰とも言える子どもの変数が要求される。しかし、モデルの中で子どもの変数とその他の変数との全ての交差項を取ることはできない。この問題は臨時的な方法によって解消できる。例えば、需要関数のパラメータの部分集合を単に子どもの変数に依存させる方法などがある。パラメータの取り方は、やりやすさや価格の反応性が子どもの変数とは独立であるといった、これまでに研究されてきた上でなされた判断による。子どもの効果に関する大きな構造への第二の動機はこれらの効果に対して似たような方法で考察できるような方法をいくつか発見したいという願望による。 需要ではなく(需要関数は価格は一定だとする)、エンゲル曲線(横軸に所得、縦軸に消費量)に興味を持ち、最初に調べた人物は様々な制約を課した。エンゲルは1895年に、エンゲル曲線は我々は以下のように制限できると暗黙のうちに仮定した。 q_i (x,z) = m_o f_i(\frac{x}{m_o(z)} 我々は価格は一定であると仮定できるので、pベクトルをモデルから排除している。これはむしろ制限的で、子供はすべての材に対して同じ効果を持つということになってしまう。仮定を緩めた以下のような定式化する研究者たちもいる。 q_i (x,z) = m_i(z) f_i(\frac{x}{m_o(z)}) この式においては各財が特定の指標 m_i(z) を持っている。このようなエンゲル曲線の定式化はあまり重要な制限を課しているようには思えないが、十分に二つの特徴を捉えている。まず第一は子どもの効果の一部分は家庭の生活をより悪くさせるものとして、認識されている。これは m_o(z) 関数を通じて機能するが、その効果は家族のサイズ、子どもの年齢によって増加する。つまり、この財の特定の指標によって、子どもの数に応じた食料やタバコへの効果が確認できる。この種の特定のスケーリングの方法はアントンバーテンらによって利用されている。私はこれを以下で説明しよう。需要関数への制限を見ていくために、我々は直接効用関数を見て行くことから考えよう。 υ(q,z) であるが、qは財ベクトル、zは子どもの特徴である。この定式化のもとで、親は同様の選好の集合を持っている、彼らは世帯の購買活動を決定すると仮定している。この最初の仮定はおそらく批判に耐えることができないだろう。しかし、親の選好に違いを与えてしまうために、我々を遠く離れたところに連れてってしまう。第二の仮定はあまり論点とはならない。需要行動を分析するために親が配分に関する意思決定を行うと仮定することは合理的なように思える。 直接的な効用関数は子どもの効果を述べる上で最も便利な選好表現というわけではない。むしろ、条件付き費用関数を定義するためにそれを用いる。

20180829

子どもは一定の予算の配分に影響を与えると認識されてきた。最もよく知られている例で、子どもがいる家庭はいない家庭と比べて、食費の割合がより大きい。子どもが一定の予算配分に影響を与えることをモデル化することに大きな労力が費やされてきた。子どもが様々な需要に与える効果をモデル化しようとする4つの動機を説明する。計量的な効率性の必要性、聡明な倹約の必要性、異なる構成要素を伴う家族の相対的な幸福について何かを推論するために需要データを使いたいという願望、世帯全体の必要性である。

 この4つの動機について議論する前に、子どもの変数をどのように定義するかについて簡単に説明する。子どもの情報を持つ世帯に関する多くの文献が子どもの年齢に特定の幅を持たせている。(例えば0歳から5歳,6歳から12歳,13歳から18歳,0歳から18歳ということもある。) そのようなデータのもとで、子どもの変数を定式化する最良と思える方法は、単に、これらの変数をあるがままに使用するということである。ただ、私はこの方法がしばしば、適切であるとは思えない。まずこの方法はスケール効果を捉えることができない。2番目の子供やそれに続く子どもの限界効果は最初の子供のそれよりは小さい。これは世帯の子どもに対してダミー変数をとることを要求する。はじめの子どものあとの非線形性を捉えるために非線形の関数が含まれるべきということが示唆される。よく使われる手法は家族のサイズに自然対数をとるという手法である。

 第二の問題は、年齢の幅を持たせることで疑似相関を生んでしまう不連続性が誘発されるということである。5歳の子どもが食料に対する需要へ与える影響は6歳のそれと類似のものであり、12歳のそれとは異なるが、上記のような子どもの変数は、この効果を隠してしまう。他方で、ある文献では特定の年齢で不連続性が存在しているかもしれない。学校開始年齢や労働供給は明らかにそれらの例である。需要や消費の研究を経て、私は世帯の任意の子どもの年齢の平均、幅がtからsでt+s+1を2で割ったものであるが、それはわかりやすく年齢効果を捉える上で効果的である。しかし、スプラインを引くことやノンパラメトリックな手法を使うことは系統だった手法として試みる価値がある。

 

~子どもと家計の経済行動~ マクマスター大学 マーティンブロウニング

Children and Household Economic Behavior

MARTIN BROWNING McMaster University

 

アノーマンパリッシュプリーストは近代のフランスにおいて、男性労働者について、"青年の労働者は働き、その労働で結婚のための費用を支払うために、満足できる衣服やその他のもの得るときには、子供がおり結婚し2つの問題を引き起こす。もし、労働によって食費やその他費用が十分でないならば、第3の問題が起こりうる。そんな時彼らには、乞食はいらないし、前に進むだけなのである"と述べた。近年、子どもの効果があまり目覚ましいものではないならば、その効果はどこにでもあるようなものではない。この論文では、方法論の問題に目を向ける。そして、子どもの家庭に与える効果をモデルし特定の分野でいくつかの推定を行う。この研究の目的のために、家庭の行動は、労働に関する家庭の効果,様々な期間での費用の配分について言及される。子どもによる、2つの特定の選択肢によって、影響を受けないであろうリストから何かを見つけることは難しいかもしれないが、需要と女性の労働供給は綿密に調べられており、まずまずのテーマとなっている。これらのテーマはセクションごとに扱われている。セクション3には、子どもの費用の議論に集中した。そして次に子どもが消費にどのような影響を与えるのかについても、議論する。

子どもの効果をモデル化するにあたり、2つの問題がある。まず第一に関係する子どもの数、間隔、性別によればおそらく異なるであろう、ほとんどないと言ってもいいような効果の捉え方の問題である。これは相対的によくある問題である。ただこの論文では、やりたいようにやっていく。第二の問題は、子どもはどんなに関心のある変数であると言っても、モデルの中で内生的であるということである。しばしばこれは、出生は外生的であると仮定することによって、回避される。(上記が引用の要点である。) 本論文では労働供給の章まで、まずこのアプローチを踏襲し、出産の内生的な問題を後回しにする。それから第5章で、ある程度議論することにする。まだ述べていない数多くの重要なトピックがあるが、本質的には、この論文はそれらのトピックについてではない。これらは、ポートフォリオ選択、住宅需要、耐久消費財に対する需要、引越し、遺産相続についても含んでいる。

これらのうち第一の問題は、子どもが家庭のポートフォリオに与える影響である。おそらく子どもの存在は影響するだろう。例えば、親の生命保険、貯金の方式。もし親が将来の大学進学を見据えるならね。もう一つ見落とされてる問題は、子どもが住宅需要に与える影響かな。かつて、子供は住宅需要に重要であるとされたが、あまり議論されなかった。もちろん逆の方向の因果関係もあるとおもう。すなわち利用できる資金と住宅のコストは出産に影響を与える、ということである。

私はおそらく扶養されている子どもの効果に、主に興味があるだろう。結果として、興味があったが私のあまり述べてこなかったトピックは住んでいる子どもの遺産相続に与える効果である。これは、最近多くの注目を集めている重要なトピックだ。私はただ単純にマイケルハードの調査を読んで星と思う。

最後に、私は多くの注意関心を欧米の研究に向けてきた。子どもが生産的な能力を持つと彼らの役割が我々を本来の注意関心から遠ざける。おそらくこのイントロは次の注意で終わったほうが良いだろう。本来私は子どもが様々な経済的意思決定に与える影響をモデル化することに興味がある。このサーベイはそれらについての実際的で簡単な推定の要約である。こういうわけで、ロバストな相関関係は数多く存在するが、信頼に値する因果関係は特定できていない。しかし、この事実によって、そのような結果を出した人々の努力を見下したりしてはいけない。むしろ、これは経済学の分野でロバストかつ信頼に値する結果を算出するのはどれだけ難しいのかを示している。

~結婚や育児 - 女性の賃金への影響 (Korenman et al)~ 20180824

Marriage, motherhood, and wages

Sanders Korenman and David Neumark

Journal of Human Resources. 27.2 (Spring 1992)

 

本稿では、結婚と母親としての活動、賃金の間の横断面的な関係性から因果推論を行う上でのいくつかの問題点を調べている。結婚や母親としての活動が賃金に与える直接的な効果の推定値は異質性によりバイアスする、ということが明らかになった(結局のところ、経験や在職期間の効果である)。一階差分モデルが結婚や母親としての活動は賃金に直接的な効果を持たないということを明らかにした。経験や在職期間は賃金方程式の中で、内生変数である可能性を示す証拠も発見された。操作変数法によって、OLSと一階差分モデルは子どもの賃金に与える負の効果を過小評価していることが明らかになった。

 

横断面的な研究は、結婚しているかどうかと賃金率の間の関係性についてほとんど何も明らかにしていないが、子どもと賃金の間の関係性の負の関係性は指摘している。しかしその関係性は、経験と在職期間のような労働力としての貢献に関する多くの変数をコントロールすると、消えることが多い。

しかしながら、横断面的な研究から因果推論を行うことには注意しなければならない理由がいくつかある。第一に労働市場における経験と在職期間は、労働供給が賃金に反応するのであれば内生変数となりうる。推定された子どもが賃金に与える効果は経験や在職期間をモデルに含めることで、かなり影響を受けるので、それらの変数が賃金方程式内で実際に内生変数であるかどうかを調べることは重要である。第二に出生や結婚に関する経済学の理論は結婚しているかどうかや子どもの人数は賃金に対して内性的でありうる、と述べている。第三に推定された結婚や子どもの賃金の効果は観測されない異質性によってバイアスしうる。賃金と相関する観測されないキャリア志向(career orientation)のような特徴によって、たとえ、結婚するか出産するかが賃金に反応するものではなかったとしても、女性は結婚するかどうかや出産するかどうかを自ら選ぶ、またはそれらによって選ぶよう導かれている。最後に、例えば標準的なサンプルセレクションの問題であるが、結婚している女性や子どものいる女性が雇用されることを選ぶ傾向がある場合、バイアスが生じうる。

これまでの研究者らは、賃金と結婚、子どもの間の横断面的な関係性を解釈する上でいくつかの問題があることを認識してきたが、一つのデータセットにおけるそれらの問題の各々の実証的な重要性を評価してこなかった。この論文は、これらのバイアスの重要性を示す論拠、バイアスを取り除くための代替的なアプローチに対して、推定されていた効果がどれだけ影響を受けやすいかの評価を示し、結婚と子どもの賃金に対する不偏的な推定値を得ることを目的としている。

結婚と母親としての活動が賃金に与える効果は、男性と女性の賃金の差に関連するため、特に関心が持たれている。例えば1985年にベッカーは結婚している女性と男性の間のジェンダー間の役割・専門化が男女間の賃金の差の原因である、と仮定している。特に、彼は独身女性と結婚している女性が、同じ労働時間、労働市場において同じ人的資本であったとしても、前者の時間あたり賃金は後者のそれを上回る、そして他の家庭内労働への責任によって、結婚している女性は都合がよく、あまりエネルギーを集中する必要のない仕事を探すようになってしまう、ということを主張してきた。よって、独身女性と結婚している女性、子どものいない女性といる女性の間の賃金格差は、性別による専門化の賃金に対する効果を明らかにしうる。

 

~Lundberg et al 子供の性別は結婚・再婚にどのような影響があるの?~ 20180823

Child Gender and the Transition to Marriage From Single Motherhood,”

University of Washington mimeograph (October 2000b)

 

本稿では、 PSIDの結婚,出生,養子縁組データから子供の性別が女性の結婚・離婚に与える影響を推定する。女性は結婚前に男の子を生むことにより結婚への移行を加速させる、ということが明らかになった。競合リスク分析によれば、生物学的な父親との結婚の方がそうでない結婚と比較して、子供が男の子であることの正の効果がより強い。また、前回の結婚において子供が生まれているとき、子供の性別の離婚確率への効果は有意ではなかった。これらの結果は、子供が女の子ではなく男の子である方が独身と比較したときの結婚の価値を増加させる、という”結婚サーチモデル”の結果と整合的である。

離婚と結婚を伴わない出産は近年急激に増加している。両親が揃っていないことが子どもに与えるインパクト、結婚の解消と結婚外の出産を引き起こす要因の調査に対しての世間の関心が集まっているのは、この増加による。結婚解消の要因の一つは、子供の性別である。アメリカでは子供の性別が女の子であるより男の子である場合、結婚を維持できる可能性が高い、という研究結果がいくつか報告されている。この報告は、これに関する離婚率の差異は1980年代から減少している、とも報告している。

なぜ男の子は女の子より、結婚生活を安定させるのであろうか。結婚・離婚に対する子供の性別の効果を社会学の標準的な分析は、親としての子供との関わりと結婚の安定性は正の相関を持つという仮定の上で、男の子の場合、父親は女の子の場合と比べて、子供との関わりが多いからであるということを理由としている。経済学の観点から、父親の育児活動は結婚の安定を2つの方法で安定させる。まず第一に、父親は息子の感情的かつ社会的な発達に対して、中心的な役割を果たすので、娘のより息子の育児に対する方が、生産的であることが考えられるが、もしそうならば、息子は独身の育児と比較して、結婚の価値を引き上げると言える。結婚の余剰が増加するのある。第二に、父親は息子を持つならば、結婚と家族に大きな価値を感じるという可能性がある。この選好は父親のジェンダーバイアスによるものかもしれない。つまり、父親が子供とより多くの時間を過ごす、家族とより関わるときに起こる心の触れ合いによるものであるかもしれない。あるケースでは息子のいる父親の家族との関わりがより大きければ大きいほど、息子がいる父親と母親の結婚に対する満足度を引き上げること、離婚の可能性を減少させることに結びつくのかもしれない、ということが示唆されている。息子の誕生が娘の誕生と比べて、結婚の価値を増加させるならば、結婚前の出産による子供の性別が結婚する確率とその後離婚する確率に影響を与えることが考えられる。多くの結婚前の出産は同棲しているカップル、長い恋愛期間を経ているカップルに影響を与える。おそらく、息子が伴う結婚の成功を引き起こすのと同じ要因が結婚していないカップルの関係性を良好にすることに結びついている。さらにいえば、娘の母親と比べて息子の母親は、子供の父親以外の夫に対して、より大きな要望を持つ、つまりより多くの息子の供給に直面する。

離婚した女性、あるいは未亡人となってしまった女性が再婚する可能性は子供の性構成によるかもしれない。ある男性が女の子ではなく、男の子の継父であるならば女の子の母親より、男の子の母親の方はより彼らに対するより大きな需要を持つであろう。加えて、夫となりうる男性が娘がいる女性より息子がいる女性と結婚しようと意欲を高めるならば、息子がいる女性は結婚市場において、大きな男性の供給に直面することになる。それゆえ、本研究では息子の母親は需要要因・供給要因が相対的な再婚率を増加させることが期待される。父親となりうる男性が血縁上の父親であるとき、男性の男の子に対する選好・女性が子供の父親を強く求めているならば、子供が女性の再婚率に与える効果は結婚前の出産後の結婚効果に比べるとあまり大きくはない。

本稿の目的は子供の性別が女性の結婚への移行、特に結婚前の出産においてどのように影響を与えるかをテストすることである。このテストの結果は、女の子に比べて男の子を持つことの満足度に対して示唆に富むものである。例えば、女の子の母親に比べて、男の子の母親は結婚する可能性が高い上に、結婚生活が維持されやすいならば、その女の子は独身の親の下で成長する可能性が高い。さらに、男の子を持つ母親の結婚する傾向が、男性の彼女たちへの大きな需要を示すならば、その女性は、女の子を持つ女性と比較すると結婚市場において、アドバンテージをかかえていることになる。

よって、PSIDのデータを用いて結婚前に子供を持つ母親に対して子供の性別が結婚へ移行させる効果の推定を行う。それから、離婚あるいは未亡人となった女性の再婚に対して、前回の結婚で生まれた子供がどのような影響を与えるのかをテストする。結果として、以前に子供が生まれており、女の子ではなく、男の子である場合、彼女の再婚への移行率が高いことがわかった。競合リスク分析においては、息子を持つことの正の効果は、結婚において子供の父親が生物学的な父親である方が、そうでない場合と比べて大きいということが示されている。子供の性別が再婚の確率に影響を与えるという証拠は発見されなかった。

~University of California Santa Barbara : Lundberg et al About parenthood~ 20180822

Parenthood and the Earnings of Married Men and Women

Shelly Lundberg, Elaina Rose

この論文では、結婚している男性と女性が親であることと賃金、労働供給時間の間の関係を調べるために、長期にわたるデータを用いる。その結果、親であることへの負の選択バイアス、家庭内での子どもに関わる相当な時間の再分配、そして家庭の行動に子供が与える影響の異質性が明らかになった。妻が労働の中断を経験したような世帯では、妻は賃金、労働時間ともに減少するが、夫の賃金、労働時間は増加する。しかし、妻が継続的に労働力として世帯に貢献する場合、妻の賃金が減少することを示す証拠はなく、むしろ夫の労働時間がかなりの割合で減少する。

家庭内での役割という概念が、アメリカの男性と女性の生産性と労働供給の意思決定において、あまり重要ではなくなってきている。近年、男性の結婚プレミアムが小さくなってきていること、子供と男性の賃金が女性の労働供給に与える限界効果は減少していると報告されている。女性の賃金・労働参加が増加するにつれて、男女の時間使用方法が似通ってきている。しかしながら、子どもがいる平均的な女性の労働時間、賃金は、男性、子供のいない女性のそれらに対して、より少ない。膨大な先行研究のもとで、賃金のファミリーギャップが調べられている。また、母親としての活動と収入の間の関係性はどの程度、因果関係があるのかに関しても数多く調べられている。女性の労働市場のアウトカムと出産の間の特定の結びつき、その結びつきが家庭の中で時間がどのように配分されるのか、に関してはいまだに大部分が不明確なままである。男性と女性の労働供給の決定は同時に決定されると理論的フレームワークの中では決定されるけれども、男性の収入に親としての活動が与える影響に関しては、ほとんど影響を受けてこなかった。

本研究では、PSIDのデータを用いて、結婚している男性と女性の労働供給と親としての活動の間の関係性を分析する。焦点となるのはアウトカムとしての労働時間、賃金と第一子の誕生の関係である。ランダムエフェクトモデルを用いて、子供の出産前から出産後までの、子がいる親とそうでない親の労働時間と賃金を分析した。本稿では、最初の子供の誕生の前から、親となる人、親とならない人は異なることがわかった。父親・母親となる人はそうでない人に比べて9%未満の賃金であった。また固定効果推定も行なっている。そこでは、個別要因が説明変数と相関がないと仮定することなしに、子供の誕生によって引き起こされた、労働時間と賃金の一貫性のある結果が得られた。さらに、最初の子供の出産によって、夫婦の時間の再分配が起こっていることも発見された。平均的に、女性の賃金は5%減少、男性の賃金は9%の増加が確認された。労働時間に関しては、子供を産んだ女性で45%の減少が見られたが、男性の全サンプルで時間の変化に関して、有意ではなかった。

ここでは女性で労働市場に参加し続けた世帯と、そうでなかった世帯を区別することで、親としての活動に対しての反応への異質性を認めている。出産により労働市場へ参加することができなくなった女性のいる世帯では、最初の子供の誕生の後、女性の賃金が23%の減少、父親の賃金・労働時間は増加した。労働に継続的に参加した女性のいる家庭では、女性の賃金減少が見られなかった。それらの女性のいる世帯の男性の賃金は増加している。しかし、労働時間は7%も減少した。本研究の結果は、子どもに関する家庭における時間の再分配は労働のアウトカムに対して重要な効果を持つこと、子供が家庭の行動に対して与える影響は条件次第で異なるということを示した。

女性の母親としての活動と賃金の負の相関はこの研究により、再考されるだろう。女性の賃金に関するファミリーギャップは単に異質性の問題であるならば、すなわち子供を持つ女性が、低賃金に結びつく観測されない特徴を所有しているならば、子供が女性の賃金に与える固定効果推定値はゼロに等しいはずである。我々は、固定効果推定の元でも、女性の母親としての活動と賃金の間に統計的に有意な関係があることを発見した。雇用において妨害があった、女性に限るが。この賃金の減少は、女性の労働市場に対しての時間と努力が分散することによる、生産性の低下と労働市場における母親に対しての差別によるものであると説明される。労働時間と努力の減少は現象いした労働時間と、蓄積した経験と雇用の期間のもとで部分的に観測される。もちろん全てが観測できるわけではなく、子供の賃金効果の完全な解明は将来の研究に身を委ねる。おそらく、母親としての労働に向けた努力の減少は父親と母親の間の時間と努力の再配分の一つの側面であろう。この踏襲されている再分配は、よく話題にされる家庭内の専門化の一つの結果である。例えば、女性は時間を育児に集中させるが、男性は子供の誕生のもとで、労働を増加させる。男性と女性のデータを結合することによって、結婚している夫婦の労働の調整を調べることができる。出産後の女性の賃金・労働時間が下がり、男性のそれは上がるという条件のもとで、増加する専門化の傾向は、全体としてのサンプルの傾向であることが示唆されている。しかし労働に継続している女性のサブサンプルにはその傾向が見られない。

第二章では、家庭内の役割、賃金、労働時間に関する先行研究のレビューを行う。第3章ではパネルデータの計量的問題への利用に関して。第4章では子供のいるいないのもとで、年齢-賃金,年齢-労働時間の分析表を比較するために用いられた、手順について。第5章では固定効果推定における、子供の男性・女性の収入に与える影響について、第6章では結論を述べて終わる。

〜Gary Becker 20180821〜

Becker, Gary S., “Human Capital, Effort, and the Sexual Division of Labor,” Journal of Labor Economics 3:1 (1985), S33–58.

 特化された人的資本から得られるリターンは非常に大きいものである。それは、結婚している男性と女性の間で労働に対して、時間と投資をどのように配分するか、ということである。さらに育児というものは、ほかの家庭内労働に比べて、より集中的に行わなければならないので、結婚している女性は男性に比べて、大きな意欲を労働に対して費やさない。それゆえ、女性は同じ人的資本を備えている男性に比べて、低い賃金である。結婚している女性は、それほど難しくはない仕事を探すことによって、労働に対する努力を節約している。結婚している女性の育児と家庭内労働に対する責任は男女間の収入と職業意的な差異に対して、少なからず影響する。

 結婚している女性の労働市場への参加はこの30年間で、急激に増加した。まず、比較的高齢の女性を中心に労働市場が参加が増加した。しかし、結局子供のを持つ若い女性の間にもこの傾向は広がった。本研究ではこの増加に対して、詳細に述べることはしないが、まずこれらの増加に関して、経済学的に簡潔に述べることは必要であろう。それらの説明は、この問題に関する研究で示される論拠に対してのテストでもある。結婚している女性の労働市場への参加が増加したのは、欧米先進国において、女性の労働力がサービス産業のもとで力を持ってきたことが要因のように思える。この収入に対する力が増加することで、女性は育児をはじめとして家庭内労働に対する時間を差し控えた。それらの対価が増加したということであるため、女性は育児の時間などを減少させ、母親として、親としての活動に対する代替的なサービスを利用するようになった。この2つの変化が結婚している女性の労働参加を引き上げたのである。

 結婚から得られるものが減少し、女性の労働力の増加で収入が向上し、離婚への魅力を増加させた。それは家庭内での性別による労働の分担があまり有用でなくなってしまったためである。結果的に、説明としては長年にわたって、離婚を増加させることになった。この結婚の利益が減少することは、同意だけのある男女のペアの増加に現れている。それは例えば、結婚していないカップルの増加や、女性が先導する世帯の増加、また近年の合法的な出産と比べると、高い割合の非合法出産が発生している、などの現象にあらわれている。離婚率、出産、女性の労働参加は様々な面で影響し合っている。例えば、離婚が解消された後は、育児が困難になるので、離婚が増加すると出産は減少する。離婚する可能性が高いようなカップルは、そう出ないカップルに比べて子供を持たないという結果も出ている。離婚した女性が労働市場に十分に参加するという理由だけではなく、結婚している女性も、離婚が可能性あるならば、事前に経済的困難を防ぐために労働市場に参加するという理由から、離婚率が上昇すると労働市場へと、女性が流入する。

 この説明は、1950年以後の先進国において、女性の収入の成長と経済的前進があまり進まなかったことがあるため、完全ではないが、近年は離婚率の上昇と女性の労働市場への参加が急速に上昇している。そこで、本研究では、労働市場への参加率、出生率、離婚率の増加に対する、女性の賃金の限界効果はその傾向が加速しているため、信頼できるものとして扱う。女性の労働市場における、収入に対する力が大きくなるにつれて、育児に費やされる時間が、最初の子供と直近の子供の後に続く労働に対して、十分に確保されるまで、出産は減少を続ける。女性は労働市場における人的資本に対して投資するより大きなインセンティブを持つようになった。結果として、収入を得る力、労働市場への参加、離婚率の増加、出産の減少が加速した。

 欧米において、過去30年間で、男性と比較しても女性の収入を得る力が、ある程度増加したことによって、性による収入の格差を人的資本の側面からどのように理解するか、ということに疑問が生じた。なぜならば、その理解が、結婚した女性が労働市場において、収入を引き上げることへの投資を増加させていることを暗に示していたからだ。しかしながら、一時的な労働市場への参加の増加によって、女性の賃金は減少していたかもしれない。なぜならば、一般的に労働供給の増加は賃金を減少させるからである。そして、女性の労働への経験が減少し、仕事に対する投資が増加することによって、観測される収入は減少する。

 それにもかかわらず、男性と女性の労働市場への参加が等しかったとしても、実証されているわけではないが、彼らの賃金は等しくないという証拠もある。労働市場において、女性に対する大きな差別があることを証明しているZabalza et alのイギリス本国での研究結果もある。この研究では、育児や食事の準備、他の家庭内労働によって女性の賃金の急速な伸びが妨げられている、ことを議論している。

 育児や他の家庭内労働は単調なもので、移動や半端な時間を要求するような仕事を制限する。家庭内労働の効果は、様々な活動の中で、エネルギーの配分をどう配分するかについてのモデルの中で説明されている。育児や他の家庭内労働が余暇に費やされるエネルギーや男性の労働市場以外へのエネルギーと比較して、膨大なエネルギーを費やすならば、男性が労働に対して準備できるエネルギーと比較して、それらの活動への責任のため、女性はそのエネルギーを準備できていないことになる。結果として女性の時間あたり賃金は減少し、仕事や職種に影響が出る。さらには男性と同じ時間働いたとして、女性は人的資本に対する投資を減少させることにさえつながる。つまり家庭内労働への責任が、男女間の収入と職種の分離を拡大させていると言える。

 第2章では特定の人的資本への活動へ投資を行う同一世帯のメンバー間での、最適な労働分配のモデルを設定する。特定の活動への集中によって得られるリターンが増加すると、家庭内での労働の専門化が進む。しかしその影響として、他の要因や女性に対する差別などによって、男女間の労働、家庭内労働の生産性に影響が出る。第3章では、様々な活動の中で個人が行う最適なエネルギーの配分について述べる。種々の活動への時間価値の測定からエネルギー生産を引き起こす要因、時間あたりの最適なエネルギー供給に関する方程式などの研究などが派生する。第4章では、収入や職種の差異へつながる、専門化への投資、エネルギーの配分、生産について述べる。結婚している男性と女性が同じ時間働いていたとしても、育児や他の家庭内労働に責任がある女性は、男性より稼がない、分離された職につく、人的資本への投資をあまり行わないことなどが示される。第5章は総評と注目すべき結論について述べる。