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~結婚や育児 - 女性の賃金への影響 (Korenman et al)~ 20180824

Marriage, motherhood, and wages

Sanders Korenman and David Neumark

Journal of Human Resources. 27.2 (Spring 1992)

 

本稿では、結婚と母親としての活動、賃金の間の横断面的な関係性から因果推論を行う上でのいくつかの問題点を調べている。結婚や母親としての活動が賃金に与える直接的な効果の推定値は異質性によりバイアスする、ということが明らかになった(結局のところ、経験や在職期間の効果である)。一階差分モデルが結婚や母親としての活動は賃金に直接的な効果を持たないということを明らかにした。経験や在職期間は賃金方程式の中で、内生変数である可能性を示す証拠も発見された。操作変数法によって、OLSと一階差分モデルは子どもの賃金に与える負の効果を過小評価していることが明らかになった。

 

横断面的な研究は、結婚しているかどうかと賃金率の間の関係性についてほとんど何も明らかにしていないが、子どもと賃金の間の関係性の負の関係性は指摘している。しかしその関係性は、経験と在職期間のような労働力としての貢献に関する多くの変数をコントロールすると、消えることが多い。

しかしながら、横断面的な研究から因果推論を行うことには注意しなければならない理由がいくつかある。第一に労働市場における経験と在職期間は、労働供給が賃金に反応するのであれば内生変数となりうる。推定された子どもが賃金に与える効果は経験や在職期間をモデルに含めることで、かなり影響を受けるので、それらの変数が賃金方程式内で実際に内生変数であるかどうかを調べることは重要である。第二に出生や結婚に関する経済学の理論は結婚しているかどうかや子どもの人数は賃金に対して内性的でありうる、と述べている。第三に推定された結婚や子どもの賃金の効果は観測されない異質性によってバイアスしうる。賃金と相関する観測されないキャリア志向(career orientation)のような特徴によって、たとえ、結婚するか出産するかが賃金に反応するものではなかったとしても、女性は結婚するかどうかや出産するかどうかを自ら選ぶ、またはそれらによって選ぶよう導かれている。最後に、例えば標準的なサンプルセレクションの問題であるが、結婚している女性や子どものいる女性が雇用されることを選ぶ傾向がある場合、バイアスが生じうる。

これまでの研究者らは、賃金と結婚、子どもの間の横断面的な関係性を解釈する上でいくつかの問題があることを認識してきたが、一つのデータセットにおけるそれらの問題の各々の実証的な重要性を評価してこなかった。この論文は、これらのバイアスの重要性を示す論拠、バイアスを取り除くための代替的なアプローチに対して、推定されていた効果がどれだけ影響を受けやすいかの評価を示し、結婚と子どもの賃金に対する不偏的な推定値を得ることを目的としている。

結婚と母親としての活動が賃金に与える効果は、男性と女性の賃金の差に関連するため、特に関心が持たれている。例えば1985年にベッカーは結婚している女性と男性の間のジェンダー間の役割・専門化が男女間の賃金の差の原因である、と仮定している。特に、彼は独身女性と結婚している女性が、同じ労働時間、労働市場において同じ人的資本であったとしても、前者の時間あたり賃金は後者のそれを上回る、そして他の家庭内労働への責任によって、結婚している女性は都合がよく、あまりエネルギーを集中する必要のない仕事を探すようになってしまう、ということを主張してきた。よって、独身女性と結婚している女性、子どものいない女性といる女性の間の賃金格差は、性別による専門化の賃金に対する効果を明らかにしうる。