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本ブログに記載されている内容は個人的見解です。

~University of California Santa Barbara : Lundberg et al About parenthood~ 20180822

Parenthood and the Earnings of Married Men and Women

Shelly Lundberg, Elaina Rose

この論文では、結婚している男性と女性が親であることと賃金、労働供給時間の間の関係を調べるために、長期にわたるデータを用いる。その結果、親であることへの負の選択バイアス、家庭内での子どもに関わる相当な時間の再分配、そして家庭の行動に子供が与える影響の異質性が明らかになった。妻が労働の中断を経験したような世帯では、妻は賃金、労働時間ともに減少するが、夫の賃金、労働時間は増加する。しかし、妻が継続的に労働力として世帯に貢献する場合、妻の賃金が減少することを示す証拠はなく、むしろ夫の労働時間がかなりの割合で減少する。

家庭内での役割という概念が、アメリカの男性と女性の生産性と労働供給の意思決定において、あまり重要ではなくなってきている。近年、男性の結婚プレミアムが小さくなってきていること、子供と男性の賃金が女性の労働供給に与える限界効果は減少していると報告されている。女性の賃金・労働参加が増加するにつれて、男女の時間使用方法が似通ってきている。しかしながら、子どもがいる平均的な女性の労働時間、賃金は、男性、子供のいない女性のそれらに対して、より少ない。膨大な先行研究のもとで、賃金のファミリーギャップが調べられている。また、母親としての活動と収入の間の関係性はどの程度、因果関係があるのかに関しても数多く調べられている。女性の労働市場のアウトカムと出産の間の特定の結びつき、その結びつきが家庭の中で時間がどのように配分されるのか、に関してはいまだに大部分が不明確なままである。男性と女性の労働供給の決定は同時に決定されると理論的フレームワークの中では決定されるけれども、男性の収入に親としての活動が与える影響に関しては、ほとんど影響を受けてこなかった。

本研究では、PSIDのデータを用いて、結婚している男性と女性の労働供給と親としての活動の間の関係性を分析する。焦点となるのはアウトカムとしての労働時間、賃金と第一子の誕生の関係である。ランダムエフェクトモデルを用いて、子供の出産前から出産後までの、子がいる親とそうでない親の労働時間と賃金を分析した。本稿では、最初の子供の誕生の前から、親となる人、親とならない人は異なることがわかった。父親・母親となる人はそうでない人に比べて9%未満の賃金であった。また固定効果推定も行なっている。そこでは、個別要因が説明変数と相関がないと仮定することなしに、子供の誕生によって引き起こされた、労働時間と賃金の一貫性のある結果が得られた。さらに、最初の子供の出産によって、夫婦の時間の再分配が起こっていることも発見された。平均的に、女性の賃金は5%減少、男性の賃金は9%の増加が確認された。労働時間に関しては、子供を産んだ女性で45%の減少が見られたが、男性の全サンプルで時間の変化に関して、有意ではなかった。

ここでは女性で労働市場に参加し続けた世帯と、そうでなかった世帯を区別することで、親としての活動に対しての反応への異質性を認めている。出産により労働市場へ参加することができなくなった女性のいる世帯では、最初の子供の誕生の後、女性の賃金が23%の減少、父親の賃金・労働時間は増加した。労働に継続的に参加した女性のいる家庭では、女性の賃金減少が見られなかった。それらの女性のいる世帯の男性の賃金は増加している。しかし、労働時間は7%も減少した。本研究の結果は、子どもに関する家庭における時間の再分配は労働のアウトカムに対して重要な効果を持つこと、子供が家庭の行動に対して与える影響は条件次第で異なるということを示した。

女性の母親としての活動と賃金の負の相関はこの研究により、再考されるだろう。女性の賃金に関するファミリーギャップは単に異質性の問題であるならば、すなわち子供を持つ女性が、低賃金に結びつく観測されない特徴を所有しているならば、子供が女性の賃金に与える固定効果推定値はゼロに等しいはずである。我々は、固定効果推定の元でも、女性の母親としての活動と賃金の間に統計的に有意な関係があることを発見した。雇用において妨害があった、女性に限るが。この賃金の減少は、女性の労働市場に対しての時間と努力が分散することによる、生産性の低下と労働市場における母親に対しての差別によるものであると説明される。労働時間と努力の減少は現象いした労働時間と、蓄積した経験と雇用の期間のもとで部分的に観測される。もちろん全てが観測できるわけではなく、子供の賃金効果の完全な解明は将来の研究に身を委ねる。おそらく、母親としての労働に向けた努力の減少は父親と母親の間の時間と努力の再配分の一つの側面であろう。この踏襲されている再分配は、よく話題にされる家庭内の専門化の一つの結果である。例えば、女性は時間を育児に集中させるが、男性は子供の誕生のもとで、労働を増加させる。男性と女性のデータを結合することによって、結婚している夫婦の労働の調整を調べることができる。出産後の女性の賃金・労働時間が下がり、男性のそれは上がるという条件のもとで、増加する専門化の傾向は、全体としてのサンプルの傾向であることが示唆されている。しかし労働に継続している女性のサブサンプルにはその傾向が見られない。

第二章では、家庭内の役割、賃金、労働時間に関する先行研究のレビューを行う。第3章ではパネルデータの計量的問題への利用に関して。第4章では子供のいるいないのもとで、年齢-賃金,年齢-労働時間の分析表を比較するために用いられた、手順について。第5章では固定効果推定における、子供の男性・女性の収入に与える影響について、第6章では結論を述べて終わる。