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〜Gary Becker 20180821〜

Becker, Gary S., “Human Capital, Effort, and the Sexual Division of Labor,” Journal of Labor Economics 3:1 (1985), S33–58.

 特化された人的資本から得られるリターンは非常に大きいものである。それは、結婚している男性と女性の間で労働に対して、時間と投資をどのように配分するか、ということである。さらに育児というものは、ほかの家庭内労働に比べて、より集中的に行わなければならないので、結婚している女性は男性に比べて、大きな意欲を労働に対して費やさない。それゆえ、女性は同じ人的資本を備えている男性に比べて、低い賃金である。結婚している女性は、それほど難しくはない仕事を探すことによって、労働に対する努力を節約している。結婚している女性の育児と家庭内労働に対する責任は男女間の収入と職業意的な差異に対して、少なからず影響する。

 結婚している女性の労働市場への参加はこの30年間で、急激に増加した。まず、比較的高齢の女性を中心に労働市場が参加が増加した。しかし、結局子供のを持つ若い女性の間にもこの傾向は広がった。本研究ではこの増加に対して、詳細に述べることはしないが、まずこれらの増加に関して、経済学的に簡潔に述べることは必要であろう。それらの説明は、この問題に関する研究で示される論拠に対してのテストでもある。結婚している女性の労働市場への参加が増加したのは、欧米先進国において、女性の労働力がサービス産業のもとで力を持ってきたことが要因のように思える。この収入に対する力が増加することで、女性は育児をはじめとして家庭内労働に対する時間を差し控えた。それらの対価が増加したということであるため、女性は育児の時間などを減少させ、母親として、親としての活動に対する代替的なサービスを利用するようになった。この2つの変化が結婚している女性の労働参加を引き上げたのである。

 結婚から得られるものが減少し、女性の労働力の増加で収入が向上し、離婚への魅力を増加させた。それは家庭内での性別による労働の分担があまり有用でなくなってしまったためである。結果的に、説明としては長年にわたって、離婚を増加させることになった。この結婚の利益が減少することは、同意だけのある男女のペアの増加に現れている。それは例えば、結婚していないカップルの増加や、女性が先導する世帯の増加、また近年の合法的な出産と比べると、高い割合の非合法出産が発生している、などの現象にあらわれている。離婚率、出産、女性の労働参加は様々な面で影響し合っている。例えば、離婚が解消された後は、育児が困難になるので、離婚が増加すると出産は減少する。離婚する可能性が高いようなカップルは、そう出ないカップルに比べて子供を持たないという結果も出ている。離婚した女性が労働市場に十分に参加するという理由だけではなく、結婚している女性も、離婚が可能性あるならば、事前に経済的困難を防ぐために労働市場に参加するという理由から、離婚率が上昇すると労働市場へと、女性が流入する。

 この説明は、1950年以後の先進国において、女性の収入の成長と経済的前進があまり進まなかったことがあるため、完全ではないが、近年は離婚率の上昇と女性の労働市場への参加が急速に上昇している。そこで、本研究では、労働市場への参加率、出生率、離婚率の増加に対する、女性の賃金の限界効果はその傾向が加速しているため、信頼できるものとして扱う。女性の労働市場における、収入に対する力が大きくなるにつれて、育児に費やされる時間が、最初の子供と直近の子供の後に続く労働に対して、十分に確保されるまで、出産は減少を続ける。女性は労働市場における人的資本に対して投資するより大きなインセンティブを持つようになった。結果として、収入を得る力、労働市場への参加、離婚率の増加、出産の減少が加速した。

 欧米において、過去30年間で、男性と比較しても女性の収入を得る力が、ある程度増加したことによって、性による収入の格差を人的資本の側面からどのように理解するか、ということに疑問が生じた。なぜならば、その理解が、結婚した女性が労働市場において、収入を引き上げることへの投資を増加させていることを暗に示していたからだ。しかしながら、一時的な労働市場への参加の増加によって、女性の賃金は減少していたかもしれない。なぜならば、一般的に労働供給の増加は賃金を減少させるからである。そして、女性の労働への経験が減少し、仕事に対する投資が増加することによって、観測される収入は減少する。

 それにもかかわらず、男性と女性の労働市場への参加が等しかったとしても、実証されているわけではないが、彼らの賃金は等しくないという証拠もある。労働市場において、女性に対する大きな差別があることを証明しているZabalza et alのイギリス本国での研究結果もある。この研究では、育児や食事の準備、他の家庭内労働によって女性の賃金の急速な伸びが妨げられている、ことを議論している。

 育児や他の家庭内労働は単調なもので、移動や半端な時間を要求するような仕事を制限する。家庭内労働の効果は、様々な活動の中で、エネルギーの配分をどう配分するかについてのモデルの中で説明されている。育児や他の家庭内労働が余暇に費やされるエネルギーや男性の労働市場以外へのエネルギーと比較して、膨大なエネルギーを費やすならば、男性が労働に対して準備できるエネルギーと比較して、それらの活動への責任のため、女性はそのエネルギーを準備できていないことになる。結果として女性の時間あたり賃金は減少し、仕事や職種に影響が出る。さらには男性と同じ時間働いたとして、女性は人的資本に対する投資を減少させることにさえつながる。つまり家庭内労働への責任が、男女間の収入と職種の分離を拡大させていると言える。

 第2章では特定の人的資本への活動へ投資を行う同一世帯のメンバー間での、最適な労働分配のモデルを設定する。特定の活動への集中によって得られるリターンが増加すると、家庭内での労働の専門化が進む。しかしその影響として、他の要因や女性に対する差別などによって、男女間の労働、家庭内労働の生産性に影響が出る。第3章では、様々な活動の中で個人が行う最適なエネルギーの配分について述べる。種々の活動への時間価値の測定からエネルギー生産を引き起こす要因、時間あたりの最適なエネルギー供給に関する方程式などの研究などが派生する。第4章では、収入や職種の差異へつながる、専門化への投資、エネルギーの配分、生産について述べる。結婚している男性と女性が同じ時間働いていたとしても、育児や他の家庭内労働に責任がある女性は、男性より稼がない、分離された職につく、人的資本への投資をあまり行わないことなどが示される。第5章は総評と注目すべき結論について述べる。