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本ブログに記載されている内容は個人的見解です。

~結婚することで男性の賃金はどう変化する?~ 20180901

THE EFFECTS OF SONS AND DAUGHTERS ON MEN’S LABOR SUPPLY AND WAGES

Shelly Lundberg and Elaina Rose

 

Theory

 

なぜ子供は男性の労働市場における成果に影響するのであろうか。母親であることが女性の労働供給や賃金を減少させるというエビデンスは数多く存在する。母親の労働供給の減少は、子供が生まれた後、女性の家庭での時間の価値が増加することで起こる(Becker 1985)。そして労働の生産性の低下につながる賃金率の減少は、仕事の時間、意欲が減少することに起因する。男性と女性の労働市場における成果は相互依存関係にあるというエビデンスのもとでは、父親の労働市場への反応の後に、母親の時間の再配分が次ぐ。

親であることは、家庭における彼らの時間へ2つの効果を持つだろうと予想される。第一にベッカーの研究に準ずるならば、夫の時間の価値と比較して、妻の時間の価値が増加することによる特化の効果が存在する。この考え方によれば、男性が労働市場に、より集中する一方で女性は家庭内生産に集中するという形態をとる。特化の効果の大きさは主人と妻の労働市場における賃金と家庭内における相対的な生産性に依存する。

第二にLundbergとRose(1999)の研究のフレームワークのもとで、本稿では市場集中効果と比較して、家庭集中効果という追加的な効果を導入する。この効果は、子供が生まれた後に、育児時間へのインプットとしての時間が増加することによる。この効果によって、親であることに反応し、家庭に費やされる世帯の全資源の増加が引き起こされる。我々の研究では、子供が女性に与える効果の予測値は明白である。特化と家庭集中効果の二つは負である。しかしながら男性に対しては、その影響は明確なものではない。親としての責任を強く感じていればいるほど、おそらく家庭集中効果は特化の効果を支配するだろう。つまり子供が生まれた後に、労働供給は減少する。子どもの父親の労働市場の結果に与える影響はおそらく、パリティのレベルとコーホートによって異なる。本研究では特化から得られる潜在的な利益は、女性の労働供給の減少が最初の1,2人目の子供がいる時の最も大きいので、パリティとともに減少していくことが、期待される。これは、父親の賃金に対して、子どもの数が与える効果は、非線形であり非単調であることを示している。そして、それに関する実証的な研究結果を与える。

結婚による特化の効果は、近年の夫婦などにおいて減少してしまったように思える。男女の生産性は類似してきているからだ。しかしながら、これが子どもの誕生の後に起こる、特化の変化が小さくなってしまったことを意味しているのではない。例えば、近年の家庭では、結婚後即座に特化を行うわけではないならば、1人目の子供が生まれた後の特化の進展はより大きいかもしれない。同様に、家庭内生産における親としての時間の代替となる市場の拡大に伴う、家庭集中効果の減少は必ずしも子供が生まれた後の家庭集中への変化が負である、ということ意味するわけではない。それゆえ、男性のアウトカムに対する子どもの効果がコーホート毎に、符号、大きさに差異を産むかどうかは実証的な問題である。

 

Literature

世帯と男性の労働市場におけるアウトカムの関係性についての論文は結婚が賃金に与える影響を中心に分析している。結婚している男性は独身の男性に比べて、同じ教育年数・経験年数であったとしても、より多く賃金をえる。しかし、結婚が男性をより生産的にさせているのか、あるいは生産的な男性が結婚を選択しているのかどうかに関しては、明らかになっていない。KorenmanとNeumark(1991)はこの結婚プレミアムについて固定効果推定を行い、結婚している男性は独身男性と比較して、およそ6%賃金が高く、そのプレミアムは結婚期間を通じて徐々に増加していく、ということを示した。入念な調査、賃金、専門家や管理職の個人的な性質に関する会社のデータを用いた彼らの研究は、結婚の効果が増加するのは、ある職種における男性の結婚プレミアムによるものであるというよりは、結婚している男性の昇進が原因であるということを示唆している。その研究で他に報告されているのは、男性の結婚プレミアムは増加する男性の生産性によるものであり、それは家庭内の特化の利益によるものである。

 

―― Korenman and Neumark (1991)  Does Marriage Really Make Men More Productive ? ――

 

Korenman

Phd Economics Harvard

Employment Marxe School

Professional Health Insurance and Poverty, Childbearing, Family?

 

Neumark

Phd Economics Harvard

Employment UCI

Professional Men&Women difference as labor force

 

Abstract

本研究は白人男性によって得られる結婚プレミアムを詳細に述べた新たなエビデンスである。長期的なデータによれば賃金は結婚後に増加する。クロスセクショナルな結婚プレミアムは収入のグラフが急になることに起因しているように思える。仕事のグレードや上司からのパフォーマンスに関する評価についての情報を含む会社個別のデータは、管理職なのか専門職なのかという職種、単体の会社なのかという環境のようなある狭い範囲で、結婚プレミアムには差異があることを明らかにしている。結婚している労働者はより高い給与が支払われるような職能評価を得ている傾向がある。ちなみにその評価の中では、給与の差異は小さい。結婚している男性は独身男性と比べて、より高いパフォーマンス評価を受けている。結果として彼らは昇進しやすい。しかしながら、パフォーマンス評価を制御することで、昇進格差を排除することができる。

Introduction

労働経済学者たちは現在結婚していない男性より、結婚している男性の方が時給という点でより収入があるということに留意してきた。このような賃金格差は教育年数、人種、地域、年齢、仕事の経験、職種や産業などが考慮されても持続する。だいたいのところ、賃金格差はおよそ10~40%である。それは大雑把に言うと人種、会社の規模、組合の賃金格差と同じくらいの大きさである。また産業の格差と同じくらいでもあるが、これらすべての要因は幅広く研究されている。結婚プレミアムは労働市場における性差別を推定することになるため、特に関心が寄せられている。アメリカにおいては、男性の結婚プレミアムが性による賃金差別の約3分の1を説明している(Neumark 1988)。(※ 賃金格差を推定する標準的なテクニックは(Oaxaca 1987,Blidnder 1987)2つのグループ間の賃金格差を平均的な性質の差異による部分と別々の賃金回帰による係数の差異による部分に分解するという方法である。係数の差異により起こる賃金格差に関しては一般的に差別的であると解釈されている。男性の結婚ステータスの係数は大きく、正の値をとるが、女性に関して言えば、大体ゼロに近い。)より一般的には、結婚による賃金プレミアムを説明しようと努めることで個人の賃金の決定要因をより理解することができる。結婚の延期・離婚率の増加、小さな子供がいる結婚している女性の労働力としての市場への参加の増加などの傾向を考慮した上で、労働市場のアウトカムにおいて結婚ステータスによる格差は関心を集めている。結婚しているかどうかによる賃金格差が生産性の格差を表しているのであれば、労働力の結婚ステータスの変化は、水面下で労働力の生産性に影響を与えうる。

男性の結婚による クロスセクショナルな賃金格差は大きいということは広く理解されているが、その原因に関しては、あまり共通の理解があるとは言えない状況である。実際に最近の賃金の性差に関する批評として、Goldingは以下のように述べている。

“男性労働者の賃金を高めるという意味での結婚の役割というものは、いまだにはっきり理解されていない。”

一つのメジャーな仮説は、収入格差は生産性格差が原因である、という仮説である。つまり結婚は労働者を生産的にさせるということである(Becker 1981 Kenny 1983 Greenhalgh 1980)。別の仮説としては、賃金格差は雇用者側のえこひいきによる、というものである(Hill 1979 Bartlett and Callahan 1984)。そして、第三の仮説は賃金・労働市場で評価される個人の特徴がベースにあって、結婚を選択するというものである(Becker 1981, Nakosteen and Zimmer 1987, Keeley 1977) ※ この分野における、出版された成果に対する我々のリビューは、広く定義されているため、これらの直近のカテゴリーの中で、発展されているメジャーな仮説はカバーしている。しかしながら、このカテゴリーに分類されない、別の仮説も存在する。ReedとHarforl(1988)は最近、以下のような仮説を提示した。それは、結婚している男性は不都合な状況下で働いているため、結婚プレミアムとは彼らを買収するための補償格差なのかもしれない、ということである。

本研究は白人男性の結婚プレミアムの原因に関する仮説の価値判断、精錬をするための詳細で新らしいエビデンスである(※ KorenmanとNeumark (1990 1988)は結婚と女性、マイノリティの男性に支払われる給与の間の関係をそれぞれ調べている)。このエビデンスは2つのリソース、National Longitudial Survey of Young Men (NLSYM)とアメリカの製造業の単体企業の会社の個別のデータから得られる。この長期的なデータは結婚ステータスが変化した時、賃金はどのように変化するのか、結婚している状態のもとで1年間を過ごした場合の賃金がどのように変化するのかを推定するために、使用される。カンパニーデータによって、我々はかなり似たような状況、例えば職種(管理職なのか専門職なのか)や環境(単体企業)というような観点で結婚ステータスによる差異を推定する。この操作によって、異なる結婚ステータスである個人の間で可能性として、異なる可能性のある、労働者・仕事の重要な性質を暗黙のうちに制御している。これらのデータは、より標準的な労働市場におけるデータからは得られない被雇用者の情報、例えば、彼らのポジション(あるいは職能評価)や上司から与えられるパフォーマンス指標などを保有している。

続く章では、男性の結婚賃金格差に関する、現在までの文献をリビューする。第三章ではNLSYMのデータについて、第四章では推定の手順とその結果を述べる。第5章については、企業データについてとそのデータより得られた知見について述べる。第6章でディスカッションと結論が続く。