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本ブログに記載されている内容は個人的見解です。

~Lundberg et al 子供の性別は結婚・再婚にどのような影響があるの?~ 20180823

Child Gender and the Transition to Marriage From Single Motherhood,”

University of Washington mimeograph (October 2000b)

 

本稿では、 PSIDの結婚,出生,養子縁組データから子供の性別が女性の結婚・離婚に与える影響を推定する。女性は結婚前に男の子を生むことにより結婚への移行を加速させる、ということが明らかになった。競合リスク分析によれば、生物学的な父親との結婚の方がそうでない結婚と比較して、子供が男の子であることの正の効果がより強い。また、前回の結婚において子供が生まれているとき、子供の性別の離婚確率への効果は有意ではなかった。これらの結果は、子供が女の子ではなく男の子である方が独身と比較したときの結婚の価値を増加させる、という”結婚サーチモデル”の結果と整合的である。

離婚と結婚を伴わない出産は近年急激に増加している。両親が揃っていないことが子どもに与えるインパクト、結婚の解消と結婚外の出産を引き起こす要因の調査に対しての世間の関心が集まっているのは、この増加による。結婚解消の要因の一つは、子供の性別である。アメリカでは子供の性別が女の子であるより男の子である場合、結婚を維持できる可能性が高い、という研究結果がいくつか報告されている。この報告は、これに関する離婚率の差異は1980年代から減少している、とも報告している。

なぜ男の子は女の子より、結婚生活を安定させるのであろうか。結婚・離婚に対する子供の性別の効果を社会学の標準的な分析は、親としての子供との関わりと結婚の安定性は正の相関を持つという仮定の上で、男の子の場合、父親は女の子の場合と比べて、子供との関わりが多いからであるということを理由としている。経済学の観点から、父親の育児活動は結婚の安定を2つの方法で安定させる。まず第一に、父親は息子の感情的かつ社会的な発達に対して、中心的な役割を果たすので、娘のより息子の育児に対する方が、生産的であることが考えられるが、もしそうならば、息子は独身の育児と比較して、結婚の価値を引き上げると言える。結婚の余剰が増加するのある。第二に、父親は息子を持つならば、結婚と家族に大きな価値を感じるという可能性がある。この選好は父親のジェンダーバイアスによるものかもしれない。つまり、父親が子供とより多くの時間を過ごす、家族とより関わるときに起こる心の触れ合いによるものであるかもしれない。あるケースでは息子のいる父親の家族との関わりがより大きければ大きいほど、息子がいる父親と母親の結婚に対する満足度を引き上げること、離婚の可能性を減少させることに結びつくのかもしれない、ということが示唆されている。息子の誕生が娘の誕生と比べて、結婚の価値を増加させるならば、結婚前の出産による子供の性別が結婚する確率とその後離婚する確率に影響を与えることが考えられる。多くの結婚前の出産は同棲しているカップル、長い恋愛期間を経ているカップルに影響を与える。おそらく、息子が伴う結婚の成功を引き起こすのと同じ要因が結婚していないカップルの関係性を良好にすることに結びついている。さらにいえば、娘の母親と比べて息子の母親は、子供の父親以外の夫に対して、より大きな要望を持つ、つまりより多くの息子の供給に直面する。

離婚した女性、あるいは未亡人となってしまった女性が再婚する可能性は子供の性構成によるかもしれない。ある男性が女の子ではなく、男の子の継父であるならば女の子の母親より、男の子の母親の方はより彼らに対するより大きな需要を持つであろう。加えて、夫となりうる男性が娘がいる女性より息子がいる女性と結婚しようと意欲を高めるならば、息子がいる女性は結婚市場において、大きな男性の供給に直面することになる。それゆえ、本研究では息子の母親は需要要因・供給要因が相対的な再婚率を増加させることが期待される。父親となりうる男性が血縁上の父親であるとき、男性の男の子に対する選好・女性が子供の父親を強く求めているならば、子供が女性の再婚率に与える効果は結婚前の出産後の結婚効果に比べるとあまり大きくはない。

本稿の目的は子供の性別が女性の結婚への移行、特に結婚前の出産においてどのように影響を与えるかをテストすることである。このテストの結果は、女の子に比べて男の子を持つことの満足度に対して示唆に富むものである。例えば、女の子の母親に比べて、男の子の母親は結婚する可能性が高い上に、結婚生活が維持されやすいならば、その女の子は独身の親の下で成長する可能性が高い。さらに、男の子を持つ母親の結婚する傾向が、男性の彼女たちへの大きな需要を示すならば、その女性は、女の子を持つ女性と比較すると結婚市場において、アドバンテージをかかえていることになる。

よって、PSIDのデータを用いて結婚前に子供を持つ母親に対して子供の性別が結婚へ移行させる効果の推定を行う。それから、離婚あるいは未亡人となった女性の再婚に対して、前回の結婚で生まれた子供がどのような影響を与えるのかをテストする。結果として、以前に子供が生まれており、女の子ではなく、男の子である場合、彼女の再婚への移行率が高いことがわかった。競合リスク分析においては、息子を持つことの正の効果は、結婚において子供の父親が生物学的な父親である方が、そうでない場合と比べて大きいということが示されている。子供の性別が再婚の確率に影響を与えるという証拠は発見されなかった。