tmp

本ブログに記載されている内容は個人的見解です。

~MIT Angrist et al 子どもと親の労働~ 20180819

Children and their's labor supply : Evidence from exogenous variation in family size

Joshua Angrist and William Evans

子どもと親の労働供給 

~世帯人数の外生的な変化による証拠~

 

子どもと親の労働供給

~世帯人数の外生的な変化による証拠~

労働供給と家庭の理論モデルは十分に発展してきたが、労働と家庭の重要な関係性を示す推定値は実証的にほとんど得られていない。本研究においては、少なくとも2人の子どもがいる家庭において、最初に生まれた子とその次に生まれた子の性比を操作変数とし、次に生まれる子どもが親の労働供給に与える効果を推定する。子どもの性比を利用した操作変数法による推定値は大きいが、対応するOLS推定値と比較すると小さい。さらにOLS推定とは異なり、性比を操作変数として利用し推定された女性の労働供給の効果は教育水準が高い女性と高賃金の夫を持つ女性に対してはない、と考えられる。また、3番目の子供を持つ女性は全サンプルの女性と同程度に労働供給を減少させる。一方で男性は女性の出産があったとしても、労働供給を減少させない。最後に操作変数を発生させるために、双子を使って得られた推定値とこれらの結果を比較する。子どもの誕生は操作変数によって引き起こされるので、子どもの年齢の違いから説明変数が一旦集められると、その推定値は性比を操作変数としたときの値とかなり近い。その推定値は子どもの年齢が13歳になるまでに、子どもの出産による労働供給の効果は消えるということを暗に示している。

 子どもと親の労働供給の関係は理論上、実用上の多くの理由から重要である。まず、エコノミストや人口統計学者らは家庭と労働市場を結びつける様々なモデルを発展させた。次に、それらの実証研究はモデルのテストとして行われてきた。子供がいないことが労働市場への結びつきを強めるならば、家庭と労働市場のつながりは戦後の女性の労働力率の増加を部分的に説明するだろう。この主張の根拠は、Goaldinが1940,50年代の女性で子供を育てながら、労働市場に強い結びつきを持つ女性がほとんどいなかったことを示したことによる。また、出産に続く労働市場からの退出と低賃金の女性の間の関係性も示された。つまり、子どもがいることで、女性はキャリアを前進させることができなかった可能性がある。

 出産と労働市場の因果関係を解消することに成功することは、他の本質的な問題を解決することにつながる。例えば、女性の労働供給の減少によって、親が育児に費やす総時間が増加し、少なくとも子どもの生活をより良くすることができる。家庭の行動に関するいくつかの研究は、妻の収入の変化は、結婚生活を安定させることを示している。子どもと親の労働供給に関する長きに渡る関心のもとで、数多くの研究があらゆる推定を報告してきたことは驚くべきことではない。これらの研究の大多数が報告しているのは、女性の労働供給と出産あるいは世帯人数の大きさの間の関係性は負の相関を持つということである。しかしながら近年の研究が示しているように、その負の関係性は不明瞭なままである。Willisは結婚の遅れ、出産の減少、離婚の増加、そして増加する女性の労働供給などの相関関係から因果効果を抽出することを可能にする、十分に計測された外生変数を見つけることは難しいと報告している。Browningも同様の見解を示している。われわれは頑健な相関関係を数多く持っているが、それらの関係から信頼できる推論をほとんど引き出すことができていない。

 出生と労働供給の因果関係の解釈に関して懐疑的な考え方が生じたのは部分的にはGoldinがそれらの理論的な理由づけを強く行ったことに部分的に起因する。実際に、この内生性は学術的な研究議題として、常に考えられているものである。ある研究では、子どもの状態に関する変数が労働時間方程式の中で説明変数として扱われ、ある人口統計学者の研究では、賃金や労働に対する献身の指標が出生率に与える影響を考慮する回帰分析がよく議論されている。出生に関する変数は被説明変数かつ外生的な変数であることはできないので、両方のタイプが因果的に解釈を持つことができるとは判断できない。

 本研究では子どもの出生から男性と女性の労働へと効果を与える、因果関係に焦点を当てる。我々の研究の貢献は2人以上の家族の兄弟性比を新たな操作変数として使用した点である。この操作では、幅広く観測された兄弟性比への親の選好を利用している。特に同性の兄弟を持つ親は、3人目の子どもを産む方向に向かう可能性が非常に高い。兄弟間で異性が発生することはランダムであり、2番目の子供が最初の子どもの性に一致するかどうかのダミー変数は少なくとも2人の子供を持つ女性が将来出産するかどうかに関して、妥当な操作変数となる。さらに、兄弟の性の配分は明らかに、両方の性別の関数となるにも関わらず、大体においては、両方が男子、あるいは女子という指標が各兄弟の性と統計的に独立である。それゆえ、長期にわたる子供の性が家族生活に与えるどんなインパクトも操作変数にほとんど悪影響を及ぼさない。

 また、操作変数として、性比を用いた結果と複数の出産によって引き起こされた結果を比較する。双子の分析はこれまでに出生に関して因果推論が行われてきたが、ここで分析されているように、サイズが大きく代表的なサンプルでは決してなかった。

 双子と性比に基づく操作変数法の並列的な分析によって、子供の年齢が異なっていると、子供の労働供給に対する影響を比較することができる。二つの操作変数によって、子供の労働供給に対する結果が消えるまでの時間を推定することができる。

 本研究は出生、労働供給、子供に関する家庭内生産の簡単なモデルによって始まる。それらは関心の変数の理論的な関係性を記述するために利用される。第2に、データと性比の操作変数の第一段階について述べる。第3に、出生と労働供給の主な結果を示す。これには、夫の収入と妻の教育年数によって定義されたサブグループの効果の分析も含む。第4に性比と双子の操作変数による結果を比較する。第五に、女性の労働供給に関する理論的なフレームと最近の動向に焦点を当て、議論する。最後に結論で終わる。