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本ブログに記載されている内容は個人的見解です。

20160807

育児時間が男性の賃金に与える影響

 

1. Background Literature

   

 1. 結婚している男性は独身男性より、賃金が6%も高い。さらにこの効果は、結婚の期間が長くなるにつれて大きくなる。その要因は、結婚している男性がより高い賃金を得られる職種についているからではなく、より昇進していることにある。昇進できるのは、生産性が高いからであり、その遂行能力は家庭内の専門化によって高められている。(Koreman Neumark 2006)

 2. marriage premiumは年々減少しており、それは夫婦間の専門化の傾向が弱まっていることによる。(Gray 1997)

 

 3. 若いこどもがいる男性は、労働時間が長い。(Pencavel 1986)

 

 4. 2人以上のこどもを持つ男性の方が賃金が高い。(Waldfogel 1996)

 

  1~4の結果は、クロスセクションデータを用いた推定であり、内生性が生じている可能性がある。例えば、父親であることは労働のアウトカムに影響を与えるが、観測不可能な要因(性格)などと相関があり、omitted variable biasが生じているかもしれない。       

 5. 操作変数法を用いて行った分析によれば、3番目のこどもは女性の労働供給に影響を与える。(Angrist and Evans 1998)

 6. こどもは男性の労働のアウトカム(賃金・労働時間)に非単調・非線形である影響を与える。

 

2. Data

 Panel Study Income Dynamics(以下 PSID)のデータ(1968~1992)を用いる。被説明変数は"年間の労働時間"と"実質賃金率"である。"実質賃金率"に関しては、年間の所得を労働時間で割り、1983年のドルの価値で図っている。次に重要な説明変数として、結婚しているかどうかを示すダミー変数、こどもの人数、性別毎のこどもの人数、少なくとも一人息子がいるか娘がいるかを示すダミー変数、最初のこどもは男子だったか女子だったかを示すダミー変数を用いる。その他にも、ceteris paribusのために、年齢・教育年数・観測年(ダミー変数)、結婚期間を説明変数として用いる。

 PSIDのデータは生データの段階で、2304人の白人男性世帯主の26809の観測値が存在する。以下に上げる理由で、観測値は減じられる。

 1. under 18 and over 60 --- 5 obserbation

 2. education missing --- 30 〃

 3. simaltaneously married --- 44〃

 4. child gender missing --- 77〃

 5. hours worked missing --- 448〃 

最終的なサンプルは2243人、26205の観測値である。

 

世代間の変化を見るために、サンプルを1950年以前に生まれたEarly cohortと以後に生まれたLate cohortに分け、分析した。Early cohortに関しては89%もの人が少なくとも1人のこどもを持つ。その割合は、Late cohortで66%である。これは、昔の方がこどもをうむ、というcohort効果と、Earlyの方が、平均年齢が34歳でLateと比較して6歳も年齢が高いという二つの理由に起因する。